【LODGE 12inch DEEP CAST IRON】
25年ほど前、何もわからないままとにかく「ダッチオーブンが欲しい!」という衝動だけで購入しました。当時は大きければ大きいほど良いだろうと思い、勢いでかなり大きなサイズを選んだのですが、これが後々思った以上に、手間のかかる大変な相棒となりました。

手間の先にある至福の味 ーダッチオーブンの魅力と苦労
使い始めに必要なシーズニング作業は、まさに力仕事。重い鍋を扱いながら表面にムラなく油を塗り込み、これを焼き込み作業とともに何度も繰り返します。その手間は初心者にとっては試練そのものです。今ではシーズニング不要のダッジオーブンが発売されていますが、当時はそんな手間いらずな商品は発売されておらず…。
さらに、ダッジオーブンで料理をした後の片付けも重労働です。普通の鍋のように洗剤でサッと洗って終わりにはできず、焦げ付きや油汚れを丁寧に落とした後、ダッジオーブンの水分を火で飛ばし錆を防ぐために再び油を薄く塗るメンテナンスが欠かせません。水分をそのまま放置していると、あれよあれよという間に錆びてしまいます。
この作業の煩わしさに何度も何度も心が折れそうになりましたが、それでもダッチオーブンで作った料理は別次元の美味しさを提供してくれます。肉はジューシーに、野菜は甘く、全ての素材が最高のポテンシャルを発揮するその仕上がりに、結局は手間も報われたと感じずにはいられないのです。
重さが生むジレンマ -出番が減ったダッチオーブンの現実
ダッチオーブンは見た目も存在感たっぷりですが、とにかく重たくて大きいため、残念ながら活躍する場面は限られます。購入当初は「キャンプ場で豪快な煮込み料理を作る」「庭で特別な一皿を仕上げる」といった理想が頭にありましたが、実際にはその重量感と扱いの手間に直面し、「さっと使う」ような簡単な道具ではないことを思い知らされました。
キャンプに持ち出す際にも、家族から「もっと軽い調理器具で十分じゃない?」という現実的な意見が飛び交い、持って行く機会はどんどん減少してしまいました。
結果として、使われる頻度は次第に少なくなり、物置の収納スペースでひっそりと出番を待つ状態が続いています。とはいえ、その存在感には今も特別な魅力があるのです。
保存作業もひとつの楽しみ
所有して25年以上が経過している現在でも、年に1~2度は保存状態の確認と錆のチェックを兼ねて、この重厚な鍋を引っ張り出すのが楽しみの一つになっています。
庭で焚火をしながら鍋を温め、油を塗るという工程は、ただのメンテナンスというよりも、ちょっとした儀式のような特別な時間です。
家族が誰も相手にしてくれない時でも、一人で優雅にその作業を行うと、不思議と心が穏やかになる瞬間があります。まるで長年連れ添った友人と時間を共有するような感覚で、次に使うその日を密かに待ちながら、しっかりと長期保存に備えています。
面倒な奴だけど大切なヤツ
本格的に頻繁な使用こそしていないものの、ダッチオーブンをブラックポットへと育てていく過程にはやはり特別な楽しさがあります。最初はシーズニングの手間や油を塗る作業が億劫にも感じましたが、徐々にその工程が鍋との対話のように思えるようになりました。
丁寧な手入れを重ねることで、使うたびに美しい黒い艶が深まり、成長の跡が目に見えてわかるのは感動的です。最近では、シーズニング未実施のLODGE製品は入手困難だと耳にしますので、手元にあるこの鍋をこれからも大切に育て、長く愛用していきたいと考えています。
まとめ
この【LODGE 12inch DEEP CAST IRON】は、僕にとって単なる調理器具の域を超えた特別な存在です。
約25年にわたるアウトドア人生を振り返る時、この鍋がある風景は欠かせません。初めてキャンプに持ち込んだときのワクワク感、試行錯誤しながらシチューを煮込んだ日のこと、家族や友人と囲んだ焚火の温もりまで、すべてがこの鍋とともにあります。重くて扱いが大変な場面もありましたが、その存在感こそがアウトドアの醍醐味を教えてくれました。今ではすっかり相棒のような存在で、この鍋と歩んできた思い出が僕のアウトドアライフを支え続けています。